7/12

あのころに戻りたいという感覚は常に無い。

常に神経をすり減らしていたと思うし、少なくとも小学校の頃は、世界はこんなに面白いことにあふれているのにどうして俺は何も知らず何も出来ないのだろうという痛痒に延々と苛まれていた記憶がある。

中学高校の頃は試験の出来しか誇れることがなく、東大に入ればこの身にまとわりつく閉塞感から逃れられると固く信じていた。

大学に入ってみるととたんに自身の卑小さを否応無く理解させられてしまい、いつか来るとうすうす感づいていた破滅、それがついに訪れたのだった、と今は平静な気持ちで振り返ることが出来るだろう。

人生をやり直せるなら、という仮定はない。多様な人間、その人生、少なくともその把握できる一部を見るとそんなことは無いとも思えるが、少なくとも、両親にはなく、祖父母にもなく、ゆえにこのおれにも存在しないのだ。

環境が十二分にあるのに、結局向き合おうと思うと嫌になって逃げ出してしまう、自身の限界を知るのが怖いのだ、これからもこれまでもずっとそうだ、だから早く、このようにそういう夢を見れる環境から逃げ出さなければならない。